第1週「ふるさとは安来」
1話のあらすじ
昭和36年1月、島根県安来市。
主人公・飯田布美枝と村井茂(水木しげる)のお見合い当日からはじまります。
見合いの朝・飯田家
「いいご縁でありますように」と、静かに仏壇に手を合わせる布美枝に反し、父の源兵衛さん(大杉漣)は、とにかく騒がしい。
妻・ミヤコ(古手川祐子)にあれこれ家内の確認をしたかと思えば、布美枝を大声で急かし、これからはじまる見合いでの振る舞い等を念押しする。
もともと亭主関白なのもあるのだろうけれど、それ以上に、このお見合いにかける父の気迫がものすごい。鼻息あらく右往左往して、まことに落ち着かない。
見合いの朝・村井家
そして、源兵衛さんに負けず劣らずの意気込みをみせているのが、茂の母・絹代(竹下景子)さんです。39歳の息子の縁談をまとめたい一心。
昭和30年代の平均初婚年齢は男性が27歳・女性が24歳なので、茂さんだけでなく29歳の布美枝さんも、この時代では親が焦り出すのも仕方ないのかも。
「きばっていかっしゃいよ!」と息子をたきつける妻の横で、「自然体でいったらよかろう」とのんびりした様子なのが、父・修平(風間杜夫)さん。
飯田家とは対照的に、村井家は”かかあ天下”のようですね。
当の本人はというと、こちらもまた飄々(ひょうひょう)として、”クラシカル”な飯田家を見上げながらにんまり。
「座敷わらしか小豆はかりでも住みついておりそうだ」と、さっそく妖怪の名前がとびだして、これからはじまる”水木しげるの物語”にワクワクします。
水木しげるの左腕
水木しげるさんは、左腕がありません。
飯田家の前に立つ茂さんの左腕が映し出されますが、それはまるでマネキンのような義手。
水木しげるさんが左腕を失ったのは、戦時中のラバウル(パプアニューギニア)でした。
一瞬、パッと閃光がきらめき、目がくらんで「あー」と叫んだ瞬間、左腕がズーンと熱くなった。すぐ近くに爆弾が落ち、吹っ飛ばされたのだ。負傷した左腕はすぐに激しくずきんずきんと痛み出した。
(引用:「水木サンの幸福論 (角川文庫)」)
「バケツ一杯分」の出血をし、意識朦朧としながら一命をとりとめたものの、傷口は熱帯の暑さでだんだんと腐ってくる。
膿が出て毒が体に回ると命が危ない。肩に近い二の腕あたりからナイフで切り落とすことが決まった。
(引用:「水木サンの幸福論 (角川文庫)」)
そして、恐ろしいことに、麻酔もされないまま左腕切断手術が決行されたのです。
そんな壮絶な戦争体験は、水木しげるさんの著書に書き記されています。
大人しく目立たない布美枝
見合いのあれこれはここでおあずけとなり、布美枝の幼少期に話はさかのぼります。
昭和14年夏、布美枝7歳(菊池和澄)。茂さんと出会う22年前です。
大人しくて影が薄い布美枝は「おとなしすぎるけん、おるかおらんかわからんもん」と友だちにまでいわれてしまうほど。
総勢8人の大家族で、姉2人と弟2人に挟まれた中間子である布美枝は、家でもほとんど存在感がありません。小さなその声はいつもかき消されてしまうのです。
ひとりで6Km離れた叔母の家へ
そんな布美枝をとりわけ可愛がってくれる、大好きな叔母がどうやら体調を崩しているらしいと聞き、ひとり6Km離れた叔母の家を目指します。
ひたすら走り続けてたどり着いた叔母(有森也実)の家。外からそっと家の中をのぞくと、叔母は元気に仕事をしていました。
ほっとする布美枝。しかし黙って家を出てきてしまったことを思いだし、父の怒りに震えた顔が浮かぶと、叔母に会わないままにそこをあとにしました。
ひとこと声をかければいいものを、そうしないところに布美枝の性格があらわれています。
その帰り道、ひとけのない田舎道を歩く布美枝のうしろから、謎の足音がせまってきます。
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